インハウスな日々

ある企業内弁護士の備忘録です

『契約書作成の実務と書式 -- 企業実務家視点の雛形とその解説』(第2版)

契約書に関する書籍は多くあれど、なにか一冊選ぶのであればコレ。と、個人的には大変お世話になっている本の2版がでました。

1.おすすめポイント
①条文・判例からの丁寧な解説
類書にありがちな、「実務的にはこういう規定が一般的なんだよ~」で終わってしまう解説はありません。
まず民法の規定だとこう、商法だとこう、こういう場合には◯◯法にも注意してね、と、法律の大原則をまず示します。
そのうえで、条項例をそのような規定ぶりにした理由を趣旨から示し、場合によっては変更例まで記載してくれる優しさ。
受験生時代に読んだ大塚・思考方法のような手厚さ(伝わるでしょうか)で、納得感を得られる作りです。
この本にはこう書いてあるけど、今回の契約書にもあてはまるのかな?、この本の条項例と微妙に違うけどどうなんだろう…などと悩む場面はでてこないでしょう。

②相場感にも触れるありがたさ
では、本書が教科書のような作りで、実務に役に立たないかというと、そんなことはありません。
①でも書いたように、「なぜ契約書の条項をこうしたか」が条文からわかる作りになっているので、応用はめちゃくちゃききます。
必要に応じて各種ガイドライン(いわば「公式見解」)を引用して解説することで、当該類型での相場感も掴める作りに。

③改正民法にも対応
「今般の債権法改正において、契約書の作成という場面では、大きな影響を及ぼす改正点は以外に少ない」(11頁)と前置きしたうえで、契約書を改訂すべき場所を網掛けで明示してくれています。
「影響は少ない」とは言われても、もし影響があったらどうするのよ、と漠然とした不安を抱える(さりとて改正法のフォローが完璧な自信もない)私のようなずぼらな人間には大変ありがたい作りとなっています。

2.具体的な使い方
①相手の契約案をレビューするとき
自社ひな型では入っている条項が入っていない、相手の修正があまりお目にかかったことのない修正で反論のしかたに悩む…等々、契約書レビューをしているとひっかかるポイントがでてくるものです。
そんな時はまずこの本を開いて法律の大原則がどうなっているか再確認してしまえばいいのです(そんなもの頭にいれておけという突っ込みは我慢してください)。
「ああ無くてもうちには不利じゃないな」「あー民法のことなんもわかってない修正案だよ」等々、修正によって契約書がおかれた状況をクリアに確認できます。
そのうえで、「ガイドラインで~となっていますし」「条文はこうですが、これは~という趣旨です。今回の取引はここが特殊ですから~してください」といった修正コメントも本書があれば簡単に作れます。

②自習に
契約解説本は、当該類型のレビューをした経験がない状態読んでも得るものが少ないと思います。
しかし、本書では基礎・基本から解説されていますので、どうやって条項を作るか、という思考過程を学ぶことができます。そのため、初めてレビューする前の下準備として読んでも、威力を発揮します。

長々書いてきましたが、契約書レビューにあたってなにか一冊買うのであれば本書を買うべきだと思っています。
本書以外にオススメがあれば是非教えて下さい!