インハウスな日々

ある企業内弁護士の備忘録です

司法試験の思い出

この季節になると、(その話題でTLが盛り上がるから)司法試験のことを思い出す。

僕は一度目の司法試験に失敗し、二度目で合格した。
今になって思い出すのは一度目の司法試験のことばかりだ。

一度目の時は帰りの電車の中で不合格を確信し、次の日から勉強を再開することにして酒を煽って寝た。
そして、実際に次の日から勉強を再開した。6月には短答で落ちたよ、というありがたい連絡をお国から貰った。
同じ夢をもつ友人たちにも報告した。大抵の友人は短答に受かっていて、気まずそうにしていた。笑い飛ばしてくれた友人はありがたかった。
あるローの同期が「短答で落ちるとかありえなくない?」と発言したという噂が流れた。真偽はわからないが、合格者も、言動には注意したほうが良い。

お世話になった先生にメールで報告すると、「話を聞くから、事務所まで来なさい」といわれた。
「話したいことなんてない」と思った。その先生は学部の頃からお世話になっていた大先輩で、司法試験で苦労された経験をお持ちだった。
今、どの面下げて会えばいいのかわからなかったが、お世話になっていたから会うことにした。
僕が先生の事務所につくと、「とりあえず飲もうか」と先生は私を居酒屋へ連れ出した。
そして、先生は「俺のときはな…」と司法試験の思い出を語ってくれた。先生は旧司の時代から司法試験に挑み、不合格になり、ローに入り、下の世代と一緒に勉強して、ようやく夢を叶えたのだ。
何度も聞いた話だった。

しかし、前とは違って聞こえた。
先生の話が重くのしかかるのを感じた。
「お前は、俺みたいになるなよ」そう先生に言われて、ようやく自分が驕っていた事に気づいた。
何の努力もしていないくせに、なんとかなると思っていたのだ。たぶん。
先生は、その年の司法試験の話はしなかった。気を使ってくれていたのだと思う。

今思えば、僕の精神状態はギリギリだった。
根拠のないプライドから不合格になったことを受け入れられていなかったのだと思う。たぶん。
たぶん、と言うのはよく覚えていないからだ。まあ、追い詰められていたのだと思う。

そこから、がむしゃらに勉強した。
同期に頭を下げて答案を見てもらい、後輩に頭を下げてゼミに入れてもらった。
みんな、優しかった。翌年、なんとか合格できた。

先生に合格報告したときには「去年の君はヤバかったな。あの話をするべきか迷った」と言われた。
僕が「あの話をしていただけてなかったら、たぶん受かってないです」と言うと、先生は笑っていた。

そして、先生は「とりあえず飲もうか」と言って僕を飲みに連れて行ってくれた。
酔ったついでに、思い出してしまった。