インハウスな日々

ある企業内弁護士の備忘録です

無資格法務とインハウスの住み分け

少し前の話になるが、

「インハウスは専門家であり、無資格法務は部門全体のリーダー、マネージャーである」

「インハウスは新しい/難しい法的問題に取り組」む、「無資格法務は、経営の意思決定に関与し、部門の方向性を決め、リソースを効率的に活用(育成)し、他部門と調整して組織全体を動かす」ことに注力すべし

という趣旨のTweetに接した。

 

この指摘は、私の感覚とは異なる部分が多いが、おそらく見ている世界が違うのであろうと思っていた。

とはいえ、上記のような「住み分け」を期待してインハウスになる人が出てきてもよろしくない(会社にとっても本人にとっても不幸である)ともいえ、いくつかTweetしたので備忘を兼ねてメモしておく。

 

1.会社がそのような住み分けを是とするか?

上記指摘は、無資格法務とインハウスで異なるキャリアプランを会社が用意することを前提とする。

しかし、そもそも企業側にとっては資格を持っているかどうかの区別しかないこと、業務範囲を明確に区別することは「換えが効かない人」を作り出してしまうこと、から、あえてそのような区別を設けるメリットが乏しいのではないか*1

 

2.インハウス/無資格法務はその住み分けを受け入れるか

難しい/新しい法律問題に取り組むために資格は必須ではない(そもそも法律事務所と協働する場面かと思われる)。

また、「経営の意思決定に関与する」ことは専門性がまさしく活かされる場面であるし、これがやりたくてインハウスになるという人はそれなりにいるのではなかろうか。

リーダーやマネージャーという観点でいうと、管理職になっているインハウスもいる*2

そして、果たして無資格法務は専門性*3という観点でインハウスに劣ると一般化できるのか。これは声を大にして言いたいが、決してそんなことはない。

結論的には、インハウス/無資格法務の側にとってもそのような棲み分けに従う意義を感じないのではないか、と思う。

 

3.感想めいたもの

個人的には、法律事務所で求められる専門性と法務部門で求められる専門性は重なるところもあるが、異なっていると考えている。

これは、法律事務所から知見を得られる企業と企業からの依頼に応えねばならない法律事務所の違い、と説明しても良いし、社内における法的リスクを踏まえた判断を求められる法務部門*4と外部からコンサルティングを行う法律事務所の違いと説明しても良いかもしれない。

冒頭で紹介したTweetは、法律事務所で求められる専門性を念頭に置いているように思えるが、インハウスは必ずしもそれで食っていこうとしているわけではない*5というところからギャップを感じたのかな、と思う次第でした。

 

そして、インハウスといっても様々な働き方があるところなので、私の見方もまた、一般化できるものではないものであろうことに留意いただければ幸いです。

 

 

*1:結果的にそうなる、ということはあり得るかもしれない。

*2:インハウスが増加しだしてからそれほど期間がたっていないことから絶対数は多くないだろうが、私は今後さらに増えていくと予想する。

*3:後述する、法務部門で求められる専門性を念頭に置いている。

*4:この部分はもっと良い表現がありそう…

*5:ここも人によりけりだと思いますが……