インハウスな日々

ある企業内弁護士の備忘録です

英語ができる法務部員になるために

思い立ったので、大嫌いだった英語を仕事で使えるレベルにするためにやったことをメモします。

英語が得意な方、英語学習が苦にならない方は、読まないでください。何も得るものはありません笑。英語が苦手だけどなんとかしたい方の参考になれば幸いです。

 

1.英語を使う場面を明確にする

なんとなく、英語ができるようになりたいな〜と思っていても絶対にできるようにならない。せいぜい、Toeicの参考書を買って、1週間程度で飽きるのが関の山だろう。家族がいる方なら、「また読みもしない本を買って」と配偶者から言われるところまでがセットである。英語力に自信のない人間が仕事で英語を使えるようになるためには、必ず使う場面を想定し、そのための必要なスキルを身につけるという意識が必要である。

「英語で会議設定がしたい」なら、最低限の英語のライティングスキルさえ不要である。過去に先輩が会議設定した際のメールを入手し、コピペすれば良い。

「英語で契約交渉がしたい」なら、英文契約に関する基本的な知識(単語や文法知識も必要だし、法律知識も少しくらいは必要になるだろう。)、リスニング能力、スピーキング能力も必要になる。

このように、一口で「仕事で英語を使う」といっても、その場面によって必要なスキルは全く異なるのであるから、まずはどのような場面で使えるようになることを目標とするのか、明確にしたほうが良い。

 

2.心構え

英語ができる法務部員になるために、心がけるべきことが2つある。

恥をかくことを恐れないこと

→むしろ失敗を重ねたほうが向上スピードも速くなる。ただ、失敗して良い場所かは慎重に見極めること。

焦らずじっくりと取り組むこと

→成長曲線は一定ではない。コツコツ積み重ねていると、ある日急にできることが増える。

 

3.場面ごとの対応法

(1) 英語メール

・英語メールのフォーマットをネットか書籍で学ぶ

さすがにこれくらいはやらないと、上司も英語関係の仕事を任せてくれないだろう。

 

・先輩のメールのCCに入れてもらう。

どのようにやり取りをしているのか、参考にする。定型的な表現はWordなどにメモしてストックする。暇な時に読み返す。英語に触れる時間を増やすことが上達のコツである。

 

・(社内環境が許すなら)DeepLやDeepL Writeを使う。

最初はざっと翻訳してもらって、ほとんどそのまま送ることになるかもしれない。しかし、必ず翻訳後の英文が理解できるか確認してから送ること。それを続けていると、なんとなくいつも使う表現は自分で書けるようになってくる。そのレベルになったら、自分で作文して、DeepL Writeを使ってグラマーチェックをするようにすれば良い(完璧ではないが、ある程度の精度でチェックしてくれる)。

 

・便利ツールを活用する。

「DMM英会話 なんてuKnow?」など、ネイティブの言い回しを学ぶことができるツールがある。表現に困ったときは助けてもらおう。意外とみんな同じことで悩んでいるもんである。

他にも類似のサービスはあり、「こなれた表現」を使いたくなったら参考にすべし。

 

(2) 英文契約

・基本ルールくらいは独力で学ぶ

英文契約特有のルールくらいは、書籍やセミナーで学んだ方が良い。書籍は大型書店にいけばいくつも見つかるので、手にとってみて自分が読みたくなった本で良い。

 

・最良の学習教材は「締結済みの自社契約」

ちまたには英文契約関連の書籍が溢れている。しかし、最良の教材は間違いなく自社のフォーマットであり、締結済みの契約である(和文契約書も同じですね)。自社ならではのこだわりポイントが反映された契約から学ぶのが一番早い。もし、先輩が契約を修正したデータが手に入るなら貰うとよい。かなり勉強になるはず。

 

・まずは読めるようになること

まずは、翻訳ツールに頼らずに意味を取れるようになること。分からない単語が出てきたら、必ずメモすること。英文契約に登場する単語は限られているため、この地味で時間がかかる作業を続ければ、効果はいつか現れる。可能であれば、同じ契約類型のものばかりを読んだ方が良い。NDAならNDAに集中するべきである。最初は数ページくらいの契約から始めた方が良い。出てくる条項のパターンも限られている。

 

使えそうだと思った表現はストックすること

他社のフォーマットだろうが自社のフォーマットだろうが、あるいはネットに転がっている表現だろうが、とにかくこれは!と思うものがあれば自分のメモにストックしていく。世の中にはストック集(雛形集)が溢れかえっているが、スキル向上という意味では自分で作った方が良い。勉強になる。

 

・「切り貼り」ができるようになること

自力で作文して修正することは、少なくとも最初のうちは御法度である。英作文とは英借文という言葉を聞いたことがあるが、Templateや前述のストックから拝借してくること。自力修正は間違いのもと。ネイティブでも、そうしていると何かの本で読んだことがある。

 

・上司や先輩に聞くこと

自力で直して意味のわからない修正案を作るくらいなら、日本語で文案を作成して上司や先輩に相談するのが良い。先輩も、意味不明な英語を読まされるよりは自分でゼロから作ったほうが(あるいは先輩のストックからとってきたほうが)楽なはずである。

 

(3) 英語会議・交渉

・事前準備に時間を費やす

可能な限り、「当日自分の頭で考えて話す場面」を減らす。法律事務所とのミーティングであれば、議題を事前に送付し、当日はその流れで進める。相談事項についてパワーポイントの資料を作ってその通りに話しても良い。読んでもらえば理解できるくらい、細かく作ってしまってもいい。このとき、出てきそうなフレーズはメモして手元に置いておくのが良い。

ー聞こえますか?それでは会議を始めます。

ー次のスライドにうつります。

ー質問は最後に受け付けます。

ー〇〇さん、よろしいですか?

ー何か質問はありますか。

こういった、超基本的なフレーズもパッと出てこないのが英語弱者の辛いところである。私は初めての英語会議に参加する際、A4で2ページくらいのフレーズ集を作って前日に丸暗記した。会議はボロボロで先輩にかなり助けてもらったが、覚えたところだけは流暢に話せた(何も準備せずに撃沈するよりマシだろう)。

 

主導権を握る

上記の内容とも関連するが、とにかく司会になり、会議を主体的に進めることが肝要である。なぜなら司会は原稿を用意できるためである。契約交渉なら、最初に画面を共有して、「じゃあ上から見ていくね」とでも言ってしまえば、こっちのもんである。当然、各項目について事前に何を話すか準備しておく必要がある。大変だが、準備しないと話せないんだから仕方ない。

 

4.終わりに

あえて、この記事ではオンライン英会話や学習アプリに触れることをしなかった。これらは、普遍的な英会話スキルを身につけるために有用であろうとは思うが、仕事に直結しないこともままあるためである。その有用性を否定するつもりはないので、ご容赦いただきたい。

英語ができない私をみかねて、先輩方は様々なアドバイスをくださったが、特に印象に残っているのは以下の2つ。

「英語で文章を書きまくってたらある日話せるようになってるから。」

→真実。書けない言葉は聞けないし話せない。話せない言葉は聞けない。

「追い詰められたら、猿でも英語話せるようになるから(アメリカ赴任された際、お子さんを現地校に入れたら3ヶ月で簡単な会話はできるようになったそうである)」

→真実。やらなきゃいけなくなったら、人間なんとかするもんである。気持ち、身ぶり手ぶりが大事。最悪、翻訳ツールを画面シェアしてタイピングすれば良い。

繰り返すがこれらのメッセージは真実である。騙されたと思って、まずは英語案件をアサインしてもらい、英語でメールを作ることから始めてみてはいかがだろうか。

 

偉そうに語りましたが、未だに上司から「この表現はおかしい」と突っ込まれることもあり、僕自身まだまだ修行中であることを最後に申し添えます。ありがとうございました。