インハウスな日々

ある企業内弁護士の備忘録です

契約書レビューを修習でやってほしかった、とはあまり思わない

久しぶりに仕事のない土曜日のお昼過ぎ、契約書レビューを修習でやってほしかった、という趣旨のツイートが流れてきました。

僕が修習生だったときは、確か民弁の集合で触った(本当にこの表現がぴったしくる程度に触っただけです)記憶があります。

契約書レビューは、インハウスはもちろん、企業法務系の事務所にせよ一般的な法律事務所にせよ多かれ少なかれ仕事として取り組む機会があるとは思います。
修習を終えて実務に出てみると、契約書レビューを初めてすることになった、とっかかりどころがよくわからない、修習でもやっててほしかった…ということなのだと思います。僕もそういう感想をいだいた気がします。

ただ、個人的には修習でやるべきことではないのでは?と思っております。偉そうなこといえるような立場ではございませんが、一言二言。

1 相手があって初めてできる仕事
契約書は、一人では結べません。それがNDAにせよ、複雑なスキームの契約であるにせよ、です。
抽象的に文言を有利にすればいいのではなく、相手を説得できる修正案を提案できないと意味がありません。
でも、相手を説得する練習を修習でやる余裕ってあるでしょうか?

2 現場があって初めてできる仕事
あえて雑に言ってしまうと、契約書は、①実務運用と相違がなく、②生じうるリスクをコントロールできていれば大体その役割を果たせます。
民法や商法の規定と比べて不利じゃないか、そういやあの条文は強行規定だったっけ…といったことももちろん大切です。大切ですが、そこが問題になるケースってほとんどないわけで、優先順位は低いのではないでしょうか?
本当に契約書レビューのトレーニングをしようとすると、それなりの記録を用意してやらないと意味がないと思いますが、そこまでやる余裕って修習であるでしょうか?

3 むしろ訴訟実務を詳しく知ったほうが
契約書の最大の見せ場(?)である訴訟で、どう扱われることになっているのか?これを知ることこそが後々の契約書レビューにも役立ってくるのではないかと思います。

修習で契約書レビューを扱うことも決してできないことはないですが、ちゃんとやろうとするとかなり手間のかかる作業だと思います。このために訴訟実務を学ぶ時間が削られるのであれば、今くらいの扱いのほうが良いのではないでしょうか。

インハウスと法律事務所では契約書レビューとの接し方も違うと思うので、異論は大いにありうるところだと思いますが…。